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「ねえ、君、あたしのモノにならない?」
最初は別に何かを意識したわけじゃなくて。 ある日突然やってきて、一緒に過ごすようになって。 一番近いのは、きっとあたしなんだと。 一緒に居ることが当たり前なんだと。 そう、思ってしまった。 「アキト」 そして、気づいてしまったんだ。 ああ、あたしは この子が好きなのかな? いつも無表情で、喋る言葉も少なくて、わかりにくいヤツだけど。 初めて会った時よりは信頼してくれているのかな、とか 本当に時々だけれど、見せてくれる穏やかな表情とか 些細なことがうれしかったりして。 まさか、あたしが、自分以外にその表情を見せたことに嫉妬するなんて。 「…何か、言ってよ。」 きょとんとしたような、何を言われたのか理解できていないような目で、アキトはあたしをみる。どうやら、本当に言葉の意味がよくわからず、何と返せば良いのか考えているようだ。 はあ、とちいさくため息をしてみる。 あたし自身も、こんな事を言うほど自分が欲深かったのか、と思う。 「…いきなり、悪かったわね。忘れてもいいわよ」 「いいよ」 答えを求めることを諦めて、会話を終わらせようと後ろを向いたあたしの背中に、アキトは少し小さな、いつものあの声で、返してくれた。 「ハルカが、それを望むなら。」 振り返ると、あたしの好きな、優しい表情で。 なんだかそれにどきっとしてしまった事が悔しくて。 いつか仕返ししてやるんだから、と自分の中で呟いた。 「あんたにも悪い事したわね」 あたしはまるで敵のほうに煙たがってしまっていたから、お詫びもかねてそいつの頭をなでてやった。 そいつは頭を撫でられると、嬉しそうに尻尾を振って、なついてきた。 事の根源、あたしがこんな行動をしてしまった原因。 アキトがあのカオを見せた相手。 それは、実は、アキトが拾ってきた犬だったわけなのだが。 この家ではアキトに一番懐いてしまったらしく、そばを離れないのだ。 あたしには懐いていないとおもっていたのだけれど、気のせいだったようだ。 …あたしが近付こうとしなかった事がそう思った一番の理由だろう。 「ねえアキト、この子の名前はもう決まったの?」 「…ん、それについては僕も考えていた処なのだけれど。」 「そうだね…」 僕らの名前から真ん中をひとつずつとって、とかいうから。 なんとなく嬉しい気分になってしまったあたしは、いいんじゃない、とか言ってみた。 PR |